2017年7月29日 jamboxparlour 0Comment

我慢は大事。

辛抱が利く、忍耐力がある、というのは人生をより良く歩んでいくための重要かつ定番の資質である。それは揺るぎない真実であるから、それらがまるで無い僕の人生は残念ながら例外なく厄介だった。

幼少の頃、保育園には時間通りに登園したことが一度も無かった。ポンキッキの放送を観終えるのが9時だったので、間に合う訳が無かった。
ガチャピンがパラグライダーに挑戦する姿や、はたらくくるまの歌を思う存分堪能する代わりに、友達を作るのにだいぶ時間がかかった。

保育園で初めて出来た友達は中東系の顔立ちをした口数の少ない男の子だった。彼は毎日時間通りに登園していたのだが、友達がいなかった。
当時四歳であったけれど、疎外感を覚えるには充分の感受性が僕たちには備わっていた。そのようにして僕たちは友達になった。

友達は出来たが、僕は相変わらずポンキッキを観てから通園したし、保育園での時間も心弾むものとは程遠いものだった。
園内の有力者的な園児とのパイプが僕たちには皆無だったので、遊具らしい遊具も手元に回っては来なかった。
僕たちは基本屋外のトイレ裏の日陰でダンゴムシを捕まえて遊んでいた。その子はダンゴムシは焼けば食べられるのだと言った。嘘だろうなと僕は子供ながらに思ったが、彼が何か発言してくれるだけで僕は嬉しかった。

その日は夏の夕暮れで、僕たちは各々の母親が迎えに来るのを遊びながら待っていた。
遊具として設置してある大きな土管の中で泥だんごを作っていると、怪しげな雨雲が瞬く間に空中を覆い、乱暴な雷雨が辺りを襲った。僕たちは屋内に逃げ遅れてしまい、土管の中で怯えながら身を寄せ合っていた。
激しい落雷の中、友達が何か言った。
良く聞こえなかったので聞き返すと、雷は針に落ちるのだと言った。だから、僕たちの名札の安全ピンを外に向かって思い切り投げて、目の前に雷を落としてやろう、と。

軽快なボサノヴァ調の「私の好きなもの」は佐良直美のカバーで、歌詞は永六輔が書いたものだ。

ボサノバのリズム
夜明けの渚
レモンの切口
洗いざらしのブルージーンズ
三味線のつまびき
トワイライト・タイム
みんな好きだけど
あなたが一番好き
好き 好き あなたが一番好き
Love you I love you あなたが一番好き

我慢しなくてはいけない時、辛抱しなくてはいけない時、僕は決まって首里フジコのこの曲を聴く。
そして頭の中で、自分の好きなものを片っ端から思い浮かべる。
もう少しだけやり過ごせば、もしかしたら自分の好きなものにありつけるのだと自分に言い聞かせながら。

それと同時に、なんの我慢も辛抱もせずに友達を作る事が出来たあの幼少の頃を思い出す。
あの子の名前はもう忘れてしまったけれど。

「ビルとビルの間に綱を張る命知らずの綱渡りのように、命懸けで自分の信じた物事を貫き通せば、きっと街は面白くなる。そして、そういった人間が近い距離で活動すれば、万が一堕ちたとしても心配はいらない。複数の綱は網となり、怖い思いはするかもしれないけれど死にはしないから」

最後に、そんな励ましの言葉をかけてくれた、僕にとっての二度目の落雷体験であるjamboxparlorに感謝を込めて。


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